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第6回定期演奏会
1999年2月7日(日) 新宿文化センター

指揮/神宮 章

ヤナーチェク
弦楽のための組曲

バーンスタイン
キャンディード序曲

チャイコフスキー
交響曲第6番 ロ短調「悲愴」 作品74

演奏会ちらし


ヤナーチェク:弦楽のための組曲

レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)はチェコの東部に位置するモラヴィア地方の国民楽派に属する作曲家。「イエヌーファ」「利口な女狐の物語」等の傑作を生んだ功績で「20世紀細大の歌劇作曲家の一人」と呼ばれているし、「シンフォニエッタ」「グラゴル・ミサ」更には晩年の室内楽作品群でも高く評価されている「知る人ぞ知る」人物である。今回採り上げた作品は作曲者の最初期の作品に当たる。

1876年モラヴィアの中心都市ブルノの音楽院で合唱指揮者となったヤナーチェクは、無伴奏男声合唱曲を多く残している。その一方で、翌年には彼の尽力で管弦楽団を設立。その楽団が、当時から親交のあったドヴォルザークの弦楽セレナード(1876年初演)等を演奏したのとほぼ同時に、彼は初めての管弦楽作品となるこの曲を書いた。この作品にア・カペラのような印象が多く感じられるのはこれらの背景によると思われる。

初演当時、6つの楽章は、17世紀バロックの舞曲―前奏曲・アルマンド・サラバンド・スケルツォ・アリア・フィナーレ―がタイトルとなっていた。1926年の再演に際し、作曲者自身がこのタイトルを削除しているものの、作品を知る上での手がかりとなろう。古くからの慣習や従来の音楽観を打破すべく、音楽的素材・技法でも私生活でも自由奔放に振る舞ったヤナーチェクの印象は、官能的なメロディーや、内声の分散和音等に所々顔を出している。しかし当時彼がプラハやウィーンで学んだばかりの古典・ロマン主義的の影響を色濃く顕わし、極めて強烈な「セレナード」に仕上がっている。

(Vc 中村晋吾)

バーンスタイン:キャンディード序曲

「オペラという言葉が当てはまらない、もっと躍動感のある言葉がふさわしい、そんな新しい形式による芸術をわれわれが観ることの出来る歴史的瞬間が近づいているのです。」当時38才、作曲家としても指揮者としても地位を確立したバーンスタインは、さるTV番組に出演してこう発言した。ちょうどそのころ、2年の歳月をかけて完成したコミック・オペラ「キャンディード」のブロードウェイ開幕を目前に控えていたのである。

バーンスタインは、フランス革命推進者ヴォルテールの同名の中編小節を原作として、そこに描かれている痛烈な風刺をもって当時のアメリカ社会に一矢報いようと考えたのである。しかしながら、作品の骨子となるべき「痛烈な風刺」がブロードウェイの観客にはいささか高尚すぎたのが仇となり、チケットの売上げは全く伸びず、ついに興行半ばにして打ち切りの憂き目となった。この興行的失敗はバーンスタインに失意をもたらしたが、実は「キャンディード」の作曲とほぼ同時進行で、別のミュージカルの計画を着々と進めていた。あの「ウエストサイドストーリー」の空前の大ヒットにより彼の「予言」を現実のものとするまで、すでにこの時点で1年を必要としていなかったのである。

「キャンディード」の初演後まもなく、バーンスタインは、その序曲のみを独立させてフルオーケストラ用に手を加えて、自分の指揮する演奏会のプログラムにのせた。こちらの方は、大好評だったようで、現在もコンサートピースとして、しばしばとりあげられ親しまれている。

(Perc 桑原崇)

 

チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」 作品74

「人間は何のために、どうして、なぜ生まれてきたのか」

神と来世の存在をついに信じ得なかったチャイコフスキーは、第6番目の交響曲「悲愴」を発表することで、この永遠の問いを芸術的に昇華させた。彼の死の年、53歳の時であった。

チャイコフスキーの最も有名な作品の一つであり、「私の一生で一番すぐれた作品」として完成されたこの交響曲は、斬新なスタイルが貫かれている。第1楽章冒頭バス―ンの絶望的な独白。暗く烈しく、限りなく憂鬱な情念の合間にみることができる束の間の甘い幸せの夢。間奏曲ふうの楽章にちりばめられた優美なワルツや小気味よいスケルツォは、却って全体の絶望感を際立たせている。異例に遅い終楽章は弦による慟哭にはじまり、あたかも一人の人間の息が絶え、心臓の鼓動が止まり、死にゆくかのように終わる。

チャイコフスキーは自分の甥に宛てた手紙の中で、「今度の交響曲には標題があるが、それは誰にでも謎であるべきものである。」と書いた。この作品の真意は、聴き手のインスピレーションにゆだねられているといえるだろう。彼はこの交響曲において、単に死と直面した人間のさまざまな様子を描写するにとどまらず、もっと深く、彼の人生観―来世のない、死によって全てが終わる人間の一生への苦悩と葛藤―といえるようなものを音楽化しているように感じられる。その永遠に救われぬ魂の叫びは、極めて直観的な美しい旋律、ドラマティックな構成、計算され尽くした和声と管弦楽法によって見事に結実し、100余年の歳月を経てなお私たちの心を揺さぶり続ける。

(Cl 井澤美幸)


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